PHILOSOPHY

このたび、新たなファッションフォトZINEシリーズ『THEO JOURNAL』を刊行いたします。
 
『THEO JOURNAL』は、毎号一人のファッションモデルを被写体に迎え、風景、スチルライフ、ペインティングとともに構成していく、小さな写真集のようなZINEシリーズです。
 本シリーズでは、「見ること」と「見られること」の関係性を出発点に、被写体の尊厳や、美のあり方について考察しています。
 
ファッションモデルは、最も純粋に「見られること」を職業とする存在であり、同時に、フェミニズムの文脈においてMale Gazeの歴史を強く背負ってきた存在でもあります。そうした視線の構造や、美が生まれる場に潜む力関係の問題について、静かに問いを投げかけます。
 
また、ヤーコプ・フォン・ユクスキュルが提唱した「環世界(Umwelt)」の考え方もひとつの参照点としています。「すべての生物は、それぞれ固有の世界(環世界)を生きる主体であり、その世界はその生物自身を中心として成立している」。AI時代においても改めて見直されるこの概念を手がかりに、『THEO JOURNAL』は、生態学、現象学、美学、フェミニズムの視点を重ね合わせながら、ファッションフォトの新たな可能性を探る試みです。あるいは「美」や「視線」のあり方について語る際、現代美学が直面する問題を、ファッションフォトを通じて問い直すということでもあります。

現代美学にとってはファッションフォトという、またファッションフォトにとっては現代美学という、互いにまだ聞き慣れない言葉たちが持ち込まれ、交錯しながら、それぞれの袋小路を脱する手がかりとなるでしょう。かつてメルロ・ポンティがセザンヌを、ジル・ドゥルーズがベーコンを参照したように、哲学とアートは互いにとって親しい友人なのです。『THEO JOURNAL』はいわば両者の社交と実験の場であり、関心のあるクリエイターやオーディエンスを巻き込みながら成長する媒体です。
 
この新しい試みが皆様に歓迎され、それぞれが直面する問いや課題に向き合うための、ささやかなよすがとなることを心より願っております。

 

 TISCH, 『THEO JOURNAL』創刊、編集